所得税法上の扶養親族になるか否かを判定する収入には、公的年金等の収入金額も含めることは源泉所得税の事務担当者に限らず一般に広く知られているが、この公的年金等の収入金額に含まれない公的年金があることを見落としてしまっていることがある。
公的年金等とは
公的年金等には次の年金がある。
- 国民年金法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法などの法律の規定に基づく年金
- 恩給(一時恩給を除く)や過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金
- 確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金
このうち1.については、老齢年金、障害年金、遺族年金があり、当然のことであるがいずれも公的年金である。
収入金額に含めない公的年金
所得税法上の扶養親族などに該当するかを判定するときの公的年金等の収入金額に、所得税が課されない公的年金は含めないこととされている。
この所得税が課されない公的年金とは、障害年金と遺族年金である。このことを知らないで源泉徴収の事務をおこなうと、社員に損をさせてしまうことになる。
例えば、老齢基礎年金60万円と遺族厚生年金140万円の支給を受けている65歳以上の家族がいるとする。収入が公的年金等だけの65歳以上の者は、その収入が158万円以下であれば扶養親族になれるため、このケースだと老齢基礎年金の60万円のみで判定することになるので扶養親族に該当するのだが、遺族年金まで含めて200万円とすると、扶養親族に該当しないと誤った判定をしてしまうことになる。
健康保険の被扶養者の認定基準
余談であるが、健康保険の被扶養者に該当するかを判定する収入には、障害年金と遺族年金も含まれる。さらに、所得税法上の扶養親族判定では収入としない、失業保険等給付、傷病手当金、出産手当金も含めて判定することになる。
ただでさえ一般社員は、所得税法上の扶養親族と健康保険の被扶養者を混同したり、正しく理解できていなかったりするのに、これらの相違が理解のし難さに拍車をかけている。
総務として、社員に適切な説明や助言ができるよう、正しい知識を身に付けておきたい。